あなたの心配・不安にこたえます。くまもとアレルギー相談室 @熊本県アレルギー疾患対策拠点病院

気管支ぜんそく

気管支ぜんそくは、空気の通り道(気道)の慢性炎症によって気管支が敏感になり、発作的に気管支が狭くなることを繰り返す病気です。日本では、こどもの8~14%、大人では9~10%にみられるといわれています。

1.気管支ぜんそくの症状と特徴

「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)、咳や痰(たん)、息切れなどがあります。
ぜんそくによる症状は特に夜間や明け方に起きやすいという傾向があり、無症状の時期を挟んで繰り返すことも特徴的です。
乳児の場合は、泣いたり、ぐずったりと不機嫌になる、また幼児の場合は、しゃべらなくなる、ごはんを食べようとしないことがぜんそく発作のサインであることがあります。

2.気管支喘息のとき身体で何が起こっているのか

  • 1 気管支粘膜がむくんで腫れる(気道の炎症)

    ウイルスや細菌、大気汚染物質、アレルギーの原因となるダニや動物のフケなどの抗原を吸入したときに、気管支の粘膜で免疫反応が引き起こされ、気道に炎症が起こります。

  • 2 気道が刺激に反応しやすくなる(気道の過敏性の亢進)

    けがをしたときにちょっとした刺激にも敏感になる状態と同じです。

  • 3 空気の通り道が狭くなる(気道の狭小化)

    気道粘膜が腫れ、たくさんの痰や気管支周囲の筋肉が縮むことで空気の通り道が狭くなり息苦しくなります。慢性炎症を繰り返すと発作が起きていないときでも気道が狭いまま(リモデリング)になってしまい、治りにくくなる原因になります。

3.診断

発作性の喘鳴や咳などの典型的なエピソードに加えて、ぜんそくと似た症状を呈する他の疾患を除外することで行います。

  • 1 呼吸機能検査:「気道のむくみの程度」を評価

    ぜんそくの息苦しさの特徴は、気道のむくみがあるため息を吐こうとするときに気管支が狭くなりスムーズに吐けないことです。これは呼吸機能検査をすることで分かります。
    気管支ぜんそくでは、気管支拡張薬を吸入すると呼吸機能が吸入前と比べて改善することが特徴で、診断の手がかりとなります。
    また、ピークフローメーターという器具を使ってぜんそくの診断やコントロールの状態を推定することができます。ピークフローメーターは5才くらいから使用が可能です。

  • 2 気道炎症の検査

    吐く息に含まれる一酸化窒素(NO)の量を測定します。好酸球(アレルギー担当の白血球)性炎症のあるぜんそくでは、吐く息に含まれるNOが上昇します。また、痰に含まれる好酸球を顕微鏡で見つける方法もあります。

  • 3 血液検査:アレルギー体質を評価

    血液検査でぜんそくの病態にかかわる好酸球数や抗原特異的IgE抗体を調べます。環境アレルゲンに対する特異的IgE抗体が存在するものをアトピー型と呼び、幼少期に発症するぜんそくの大半はこのタイプといわれています。

4.治療

気管支ぜんそくの治療は発作のない安定期と発作を起こしている増悪時の治療に分けられます。
発作の予防には、「気道のむくみ」の原因となっている炎症をしっかりおさえることが大切です。気管支拡張薬のみの治療は重症発作を起こす危険性がありますので、必ず抗炎症治療の併用を行います。

重症例では、全身性ステロイド投与や生物学的製剤(抗体製剤)、気管支サーモプラスティを行うこともあります。




なお、乳幼児ぜんそくについては、長期管理薬である吸入ステロイドと軽度の身長抑制(身長の伸びが1.2cm低かった)との関連があることが分かっていますが、重症度を正しく判断して適切に使用することは副作用を大きく上回るメリットがあります。そのため、良好なコントロール状態を維持できる必要最低限の治療をしていくことが推奨されています。
また、喘息の吸入薬はさまざまなタイプがあり、発達の段階や呼吸機能、生活スタイルによってどのお薬が最適かは個人によって異なります。吸入しても思ったような効果が出ない時には、正しく吸入できていない場合や吸入器具を変更したほうが良い場合があるため、主治医の先生に相談するようにしましょう。

5.救急外来を受診するサイン

表2のような場合には、救急外来を受診しましょう。

強い喘息発作のサインがみられるとき
  • 起坐呼吸:横になれない、眠れない
  • 鼻翼呼吸:息を吸うときに小鼻が開く
  • 陥没呼吸:息を吸うときに胸が凹む
  • 肩呼吸:肩を上下に動かして呼吸する
  • 唇や爪の色が白っぽい or 青〜紫色
  • 脈がとても速い
  • 話すのが苦しい
  • 歩けない
  • ボーっとしている or 過度の興奮、暴れる
  • 大小便を失禁する
発作止めの吸入頻度が増加したとき 気管支拡張薬(β2刺激薬)の吸入を1-2時間おきに必要とするとき
発作が長引くとき 気管支拡張薬で3時間以内に症状が改善しないとき
症状が悪化していくとき

喘息予防・管理ガイドライン2018より一部改変




また、普段のぜんそくコントロールの状態を自分で知っておくことが大切です。ぜんそくコントロールテスト(Asthma Control Test: ACT)などの簡便な質問票がありますので、自分の喘息の状態を知るために活用してみましょう。

6.治療の目標

適切な治療を行うことで健康な人と変わらない生活を送ることが最大の目標です。近年では治療法の飛躍的な進歩によりぜんそく患者さんの生活の質(QOL)は改善してきています。良好な呼吸機能の維持を目指して根気強く治療を続けていきましょう。

熊本大学病院
呼吸器内科

医員 吉田知栄子

・日本呼吸器学会専門医
・総合内科専門医