あなたの心配・不安にこたえます。くまもとアレルギー相談室 @熊本県アレルギー疾患対策拠点病院

アレルギー性結膜炎

毎年2月を過ぎるとスギ花粉が飛散し、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみに悩まされる人が多く見られます。その後もヒノキやブタクサなどの花粉が原因となってアレルギー症状を引き起こします。これが、いわゆる花粉症です。眼科的には結膜(白目表面からまぶたの裏側までをおおっている粘膜)にアレルギー症状が現れ、アレルギー性結膜炎と呼ばれます(図1)。

1.症状(アレルギー性結膜炎のタイプと傾向)

目のかゆみ、流涙、白っぽい目やに(眼脂)、異物感などの症状が、花粉の飛ぶ時期に見られるものは、季節性アレルギー性結膜炎と呼ばれます。 アレルギー反応を起こす抗原には花粉以外にもダニ、ハウスダストなどがあり、この場合、1年を通してアレルギー症状を呈することが多く、通年性アレルギー性結膜炎と呼ばれます。
アトピー性皮膚炎があると、アレルギー性結膜炎を合併する率が上がり、症状も強くなる傾向があります。結膜だけでなく角膜にも病変を来すことがあります。アレルギー性結膜炎では通常、増殖性の変化は見られませんが、アトピー性皮膚炎に合併した症例では増殖性変化を示すものがあります。
また、10歳ぐらいの少年に多くみられる春季カタルでは、結膜に隆起した病変を生じる場合があります。上眼瞼裏側の結膜に石垣状乳頭増殖(図2)や、角膜周囲の結膜にトランタス斑と呼ばれる隆起病変が見られます。さらに、角膜に潰瘍(シールド潰瘍)やプラークを形成して、視力低下を来すことがあります。
コンタクトレンズの長期使用、義眼や手術用縫合糸など慢性的に刺激を受けることによるアレルギー反応もあります。上眼瞼裏側の結膜に1mm以上の大きなブツブツ(乳頭状の突起)が多数見られるため、巨大乳頭結膜炎と呼ばれます。また、点眼薬の使用によるアレルギー性結膜炎も散見されます。
かゆみでむやみに目をこすると角膜に傷がついたり、結膜下出血を来したりすることがあります。またかゆみだけでなく、結膜と白目の間に水分がたまり、白目がブヨブヨに腫れているように見えたりすることもあります(結膜浮腫)。症状が出たら触らないようにして、速やかに診察を受けましょう。

2.原因(メカニズム)

結膜局所には肥満細胞(好塩基球)があります。そこにある抗原受容体に花粉などの抗原がくっつくと、肥満細胞からヒスタミンやセロトニンなどの化学伝達物質が放出されます。それらが三叉神経の終末に作用してかゆみが生じるとされています。このアレルギー反応は、I型(即時型)アレルギーと呼ばれます(図3)。
ちなみに以前は寄生虫に対して防御作用を有すると考えられていた好酸球が、寄生虫病が激減した現在ではアレルギー反応に関与していると考えられています。

3.診断

目がかゆく、目やにが出るということだけでアレルギー性結膜炎と断定することはできません。眼科的診察で結膜に濾胞というブツブツしたリンパの塊や乳頭増殖が認められ、塗抹検鏡(目やにや結膜の表面から採取した細胞にギムザ染色という特殊な染色を施す方法)にて好酸球が多数見つかれば、確定診断となります。
その他、IgE抗体検査という研究室で行われる方法もありますが、一般診療では実施が難しいため通常行いません。

4.治療

多くの抗アレルギー点眼薬があります。ヒスタミンなどの化学伝達物質が肥満細胞から放出されるのを抑えたり、放出された化学伝達物質を中和したりすることで、効果を発揮します。前者はアレルギー反応を生じる前に使用すれば、より効果的といえます。後者はアレルギー反応を生じてから使用するもので、1日4回ほど点眼します。
これでも効かない場合は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬の点眼を使用します。作用が強いのもありますので、症状に応じて使い分けます。ステロイド点眼薬はアレルギー反応経路の多くの部位を阻害しますので、抗アレルギー点眼薬より有効です。しかし副作用もあるので、使用にあたっては注意が必要です。例えば、感染症を起こしやすい、眼圧上昇(緑内障)、白内障の進行などがあります。
その他に免疫抑制薬があり、シクロスポリン点眼薬、タクロリムス点眼薬が春季カタルの治療薬として市販されています。ステロイド薬点眼中に眼圧が上がる患者さんにはこれらの免疫抑制薬点眼を使用することで、ステロイド薬点眼薬を中止、あるいは減らして治療を行うことができ、有用です。
点眼薬によるアレルギー性結膜炎が疑われる場合は、原因と考えられる点眼薬を中止し、その後に治療法を検討します。薬物治療で限界がある場合は、外科的治療(手術)を行うことがあります。例えば、乳頭増殖病変や角膜プラークに対する切除術です。
花粉症では、マスクの使用に加えて眼鏡やアイゴーグルの使用、花粉の飛ばない地域への転居、あるいは減感作療法(アレルギーの原因物質を少しずつ体内に入れ、それに対する過敏な反応を減らしていこうという治療法)を受けるなども考えられます。

くまもと森都病院
眼科

診療顧問 松本 光希

・熊本大学医学部医学科臨床教授
・日本眼科学会認定専門医・指導医
・日本眼感染症学会会員
・日本眼炎症学会会員
・日本角膜学会会員
・ARVO
・AAO
・身体障がい者福祉法指定医
・更生医療指導医
・難病指定医